(出典:週刊 ニュース深読み「介護施設で何が… どう守る“老後の安心”」)
川崎市の介護施設での虐待事件が問題になりました。
この事件について、「介護の現場にいる人」のTwitterをまとめたというブログが話題になっていましたのでご紹介します。
入所施設と通所施設では全く違う部分もありますが、デイサービス長老大学としても他人事ではないと考えさせられました。
テレビでは 介護職員から老人への暴言暴力は センセーショナルに暴かれるが 毎日毎日毎日どこの施設や病院ででもおきてる、問題行動が顕著な体力はかなりある認知症老人による、職員への乱暴は 仕事だからしょうがないでしょ で 報道される回数少ないからな 知らない人は全く知らない世界
— エズメ (@esme9story) 2015, 9月 8
川崎の老人ホームの報道見てて 同じ介護職としてすごく共感する これが現実です そして、介護職員も同じように 利用者からこういうことをされてます でも、私たちは仕事だから 殴られても鉛筆でさされても なにも守られないんです。 利用者はこうして報道されても私たちは虐待と言われる
— みやびりん介護あと何年⁉︎ (@calcium1000kg) 2015, 9月 9
Sアミーユ川崎幸町の虐待事件は酷いものでした。
そして、そんな酷い事件を生み出してしまった背景のひとつとして、利用者さんからの暴力が当たり前のように常態化している現実があると、ここでまとめられたTweetからは読み取れました。
認知症の方の暴力については、ご家族や主治医とも話し合い、丁寧なアセスメントを通じてひとつひとつ理由を探り、取り除いていくことが基本的な対応となります。
しかし、理由がわからないことも、わかったとしても対応の難しい問題もあります。
暴力は連鎖するものであり、暴力を振るうことと暴力を振るわれることは表裏一体であると私は思っています。
暴力は振るう側もつらい思いでいることが多いです。
振るうことはもちろん、振るわれることもあってはいけない。
応援を呼ぶこと、身を守るために逃げることも大切な対応です。
デイサービス長老大学でも、認知症の利用者さんからの暴力により職員がケガをしてしまったことがありました。
応援を呼ぶべき場面でもひとりで対応してしまったことが理由のひとつと考えられました。
その後の聞き取り調査では、「叩かれたまま介助したほうが早いと考えてしまった」こと。また、「利用者さんのイラダチに共感し、自分が叩かれることで少しでも気が済めばと考えてしまった」こともあったようです。
仕事が早く共感性の高い、とても頼れる職員ですが、だからこその判断ミスといえるかもしれません。(職員の判断ミスだけが理由とは考えていません。)
私自身も運営面での至らない点が多くあったことを反省しました。
理想と現実、やりたいこととできることの違いなど、運営上での判断の迷いを反省しました。
事故後は顧問の社会保険労務士さんにアドバイスをもらいながら、労働災害事故として病院を受診し、労働基準監督署と町役場の健康福祉課に報告書を提出しました。
(追記:その後、労働基準監督署から第三者行為としての災害届けと主治医の症状経過報告書を求められ、提出しました。)
暴力をゼロにすることは困難と思いますが、できることは多くあると思っています。
利用者さんから職員への暴力が常態化している施設とそうでない施設には違いがあるでしょう。
職員から利用者への虐待もある施設とそうでない施設には違いがあるでしょう。
労働基準監督署や保険者への報告などが適切に行われているかどうか。
問題に対し現場と運営側の意見交換がおこなわれているかどうか。
ボランティアや外部サービス事業者など、外からの目が入る環境かどうか。
悪い意味での介護業界の常識に染まりすぎていないかどうか。
プライバシーへの考え方など検討すべき点は多々ありますが、同意形成できたならば、私はWEBカメラの活用などもひとつの方法だと考えています。
他の施設から受け入れを拒否される方を頑張って受け入れている施設で虐待がおこってしまうこともあるかもしれません。
在宅介護支援の現場ではご家族の頑張りの危うさについては意識されていますが、施設介護でも、頑張ることの危うさに対しては支援が必要なのだろうと思います。
川崎の老人ホームの報道見てて 同じ介護職としてすごく共感する これが現実です そして、介護職員も同じように 利用者からこういうことをされてます でも、私たちは仕事だから 殴られても鉛筆でさされても なにも守られないんです。 利用者はこうして報道されても私たちは虐待と言われる
— みやびりん介護あと何年⁉︎ (@calcium1000kg) 2015, 9月 9
とてもつらい状況であることがよく分かります。
しかし、介護の労働市場では、労働者側は決して弱い立場ではありません。
慢性的に人手不足な業界だからこそ、労働者側から状況を変えていく方法も考えやすいです。
都道府県庁(地域密着型サービスならば市町村役場)の指定担当窓口や、労働基準監督署に報告すれば、報告すると言うだけでも、経営者側も必死に職員を守ると考えます。
個人や施設の頑張りだけではどうにもならないことについては、国に介護報酬や人員配置基準などの仕組みを変える方向で対応するよう働きかけることも必要と思います。
個人的には、多くの暴力も虐待も、人手(≒お金)に余裕があれば解決できることは多いと感じています。
社会保障費は増える一方で、お金がいくらあっても足りない厳しいご時世ですが。
だからこそ、デイサービス長老大学では聞き書きを中心とした価値共創型介護の取組みにより、少しでも介護の現場からお金を生み出すことができないかと日々考えています。
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