ブログに無断で介護の様子を赤裸々に書かれたとして、訪問ヘルパーと派遣会社に損害賠償命令が出たことがニュースになりました。
訴えられた訪問ヘルパーの男性は「好意的な感情を持っており、プライバシー侵害の意図はなかった」と主張したそうですが、無断で記事にしていたということは「利用者さんの意思」という介護において最も重要な部分をないがしろにしていたということですので、賠償命令の判決は妥当だろうと私は思います。
デイサービス長老大学では、利用者の皆様から聞書きしたお話をブログ等で社会に発信する活動をしています。
そして、できれば、介護の様子なども透明性高くブログに書くことも目指したいと考えています。
このように、写真をブログ記事中に掲載させていただいたこともあります。
デイサービス長老大学は、そのコンセプトから、通常の介護施設に比べて情報の公開範囲も共有範囲などの取り扱い方が違ってきますので、個人情報や肖像権などの使用同意書やインタビュー利用の著作権についての同意書などは、弁護士さんや行政書士さんなど専門家の皆様に相談し作成していただきました。
法律は用語の概念を理解することが難しいですが、大事なことは利用者さんの意思を尊重することです。利用者さんの意思を守るために書類を整えることも大事です。
そして、写真利用の同意書にサインをもらえば、どんな写真でも使って良いというわけではありません。
「自分の意志が尊重される」ということは、老いも若きも関係なく、大切な人の権利だと思います。このことを決して忘れずに、写真でも聞き書きのエピソードでも、ご本人さんの意思を尊重し、ご家族との連絡をしっかりとりながら、信頼関係の上で使わせていただくことが大事だろうと思います。
今回の介護ブログ訴訟ではヘルパー男性を派遣していた事業者も 「個人が容易に情報発信できる状況なのに、研修などの十分な指導監督をしなかった」として賠償命令が出ています。
デイサービス長老大学は、今は社会経験・社会良識の豊富なスタッフに支えられていますのでこのような問題は起きにくいですが、今後は新卒などの若い方に来ていただくことも考えられますので、人材育成のための研修資料を今から作っておく必要があると思わされました。
「○○をしてはいけない」というような表面的なルールとしてではなく、応用力のある基礎教養的な部分から人権感覚を身につけて欲しいと思います。
というわけで、研修に使えそうなクイズを高校世界史の授業をまとめたWebサイトから引用します。いまから700年くらい前の、『アーサー王物語』のなかのひとつ「ガウェインの結婚」という話からの問題です。
「この1年のうちに問の答えが見つかったならば、おまえを許そう。もし、見つけられなければおまえの王国をそっくり私がもらおう。よいな」よいもなにも、とにかく助かりたいからアーサーはこの条件を承知します。そして、答えを探して放浪の旅にでる。
どんな問題を出されたかというと、これがすごい。こんなのです。
「すべての女性がもっとも望むことは何か」
難しいねー。わからんねー。わかるって人いますか。
介護職の皆様、答えはわかりますか?
正解は 「自分の意志を持つこと」
「自分の意志が尊重されること」と言っても良いかもしれません。
問題は「すべての女性が望むこと」ですが、男性も同じです。
老いも若きも同じです。
私達、デイサービス長老大学はその基本的な人権感覚を常に忘れることなく、利用者の皆様の意思を尊重し、日々の業務に取り組みたいと考えています。
【契約書作成でお世話になった法律家の皆様】