こんにちは。
デイサービス長老大学の澤本洋介(@sawamoto482)です。
昨年の夏頃に、ホリエモンさんが、「介護は誰にでもできる仕事だから給与はあがらない」といった発言をtweetし、話題になっていました。
誰でもできる仕事だから単価は残念ながら上がらない
— 堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) 2016年8月12日
RT @takinobori0420: 介護士の給与を上げるべきだと思いますがどう思いますか?代えのきかないプロフェッショナルな仕事ですよ。
現状では、介護職の給与があがらないのは、介護報酬を主とした介護事業所の収益構造が最も大きな理由だろうと思います。
利益の上限が決まっていますので、職員への報酬も上限が決まってしまいます。
ホリエモンさんは、こちらも指摘しておられましたが、あえて引っかかる方で話題を作れるのが彼のユニークなところだと思っています。
介護は、対人の仕事です。
しかも一人一人の状態がまったく違う身体介護の仕事は決して簡単なものではありません。 少しの気の緩みが、大きな事故につながります。
そんな仕事が「誰にでもできる」ということは、介護関係者の努力の成果でもあります。
センスのある無しや上手い下手はもちろんありますが、意欲のある人間がある程度のトレーニングを積めば、できるだけ早く現場にでられるように、それぞれの地域や職場で研修プログラムが組まれています。
慢性人手不足な業界だからこその洗練と言えるでしょうか。
長老大学にも毎月のように高知県社会福祉協議会など様々な組織から研修のお知らせが届きます。そのほとんどか非常に安価に受講することができます。
仕事のファーストキャリアが鍼灸マッサージ師である私には、技術を惜しみなく共有して改善していこうという介護関係者の感覚がとても新鮮に感じます。
「介護は誰にでもできる」=「自分は誰に介護されても良い」ではない
ホリエモンさんの「介護は誰にでもできる」と表現は、ある程度正しいと思います。
ですがそれは、「自分は誰に介護されても良い」とイコールではないとも私は思います。
介護の現場では、人と人とが感情的にも肉体的にも近い距離で関わります。
入浴介助の誘導ひとつとっても、ある介護者ならばスムーズにいき、別の介護者ではうまくいかないということはよくある話です。
- 安心して話ができる。
- 人に見せたくないところも見せられる。
- 会話のテンポや内容が好みに合う。
- 認知症の方や、お気持ちが不安定になっておられる方の、その場その場の状態を読み、雰囲気を合わせて適切な声かけができる。
介護コミュニケーションは研修で身につけることもなかなか難しい部分です。
そしてもちろん、介護技術は高い人がいい。
経験豊富なベテランはやはり対応力が高いですが、一方で、世界放浪から帰ってきて初めて介護の仕事を始めた初任者が、気難しいと思われているご利用者さんと馬が合うというような「人間同士の相性」の部分も大きいです。
自分の介護をする人をもし選べるならば、多くの方は、「誰でもいい」ということはなく「選びたい」思うのではないでしょうか。
ホリエモンさんもご自身の介護者については、きっと厳しく人を選ぶのではないかと思います。
ホリエさんに選ばれる介護士は多分稼げます。
介護職処遇改善の現実的な着地点はどこか
国家資格者である介護福祉士を中核的人材として位置づけているのがこのキャリアパスの特徴。介護の専門職である介護福祉士がチームケアにおいてリーダーを担い、チーム内の介護職に対する指導やケア品質の向上に寄与することを想定しています。
介護職の処遇改善施策も、介護福祉士をチームリーダーと位置付けたうえでの管理職手当になってしまいそうな気配が濃厚です。
「キャリアパスのルートは用意しました。努力して資格をとって管理職になれば給与はあがります。」という体裁を整えることで精一杯で、介護実務に従事する介護職全ての賃金が上げることは国には難しいのだろうと思います。
市場に評価される介護職の待遇は上がる
一方で、介護保険のサービスと自費の保険外サービスを一体的に提供する混合介護の解禁も近いと予想されています。
介護報酬中心だった事業所の収益モデルも変わってくるかもしれません。
この変化によって、ご利用者に選ばれる(市場に評価される)介護職員の評価が上がる可能性も高いだろうと私は予想しています。
長老大学では、一昨年から職員のキャリアパスの評価シートに
「ご利用者さんに、この人がいるから長老大学に来たいと思っていただける」
という評価項目を設定しています。
長老大学のスタッフたちはこの項目は全員が満点で、ご利用者さんから、「これほど良い職員ばかり揃っている施設は見たことがない!」とお褒めの言葉をいただいています。
混合介護の時代には、長老大学のスタッフのように、ご利用者に選ばれる(市場に評価される・集客力のある)介護職員は、事業所からの評価も高くなるだろうと私は予想しています。
ホリエさんが保育士について語っていたCtoCのマッチングシステムも出て来るだろうと予想します。
規制緩和してCtoCのマッチングで相互評価したり小規模のサービス拠点が作れるようにしたり、認可施設の中抜きを無くすしかない。誰でもできる仕事の待遇は永遠にあがりません。RT @u1_ikegawa: https://t.co/Fr4x2qmdVI
— 堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) 2016年8月12日
市場の評価は、介護理論的に、好ましいものばかりではないでしょう。
自立支援を妨げるような過剰介護が評価されてしまうこともあるでしょう。
マッサージ業界で見かける「ミニ教祖」のように、利用者に精神的に依存させることを狙う介護士も出てきそうな予感がします。
混合介護の時代にも、福祉の仕事の矜持として、 お金の無い、より弱い立場の人の介護をしたいと考える方も大勢おられるでしょう。
国にそれを支える力が無い時代には、大勢の支援者を巻き込むことが必要になりますので、そういう方にもマーケット感覚が必要になるだろうと思います。
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国の社会保障の力が弱くなる未来には、介護も市場性の高い業種に変化していくことは間違いないだろうと思います。
変化を楽しみながら、高齢者の皆様と共に価値を生み出し、やりがいのある介護の仕事を続けていきたいと考えています。