デイサービス長老大学

高齢者の皆様と共に未来をつくる。デイサービス 長老大学 のブログです。


季節の行事とごちそうの記憶

こんにちは、長老大学オンライン支店スタッフのあいかわです!
今回は、T様の聞き書きをさせていただきました。

一年が経つのは本当に早いもので、お正月があっというまに終わり、いつのまにか立春も過ぎ、ひなまつりがやってきました。
T様には、子どものころのひなまつりのお話と、お正月のお話を伺いました。
T様は、徳島県の徳島市内の生まれでいらっしゃいます。


T様:(おうちに)ひな人形はありました。小さいときからね、親が買ってきてくれていてね、毎年飾ってくれていました。そんな大きなものではないけど、小さいあれだけどね、五段くらい。昔はね、お内裏さんと、五人囃子や三人官女、あんなんがちゃんと、決まっちょったからね。ちゃんと段をしてね、まつりのときは飾ってくれよりました。やっぱり、近所がぜんぶあの、街のなかでしたからね、どこの家にでもあったのよ。

いま、何段もあるようなひな人形があるお家は、それほど多くないのではないかと思います。また、ひな人形とひとくちに言っても、「段飾り」、「出羽飾り」、「親王飾り」など様々な種類があるそうです。
久月(n.d)(https://www.kyugetsu.com/products/hina
わたしの家のひな人形は親王飾りでした。「五段なんてすごいですね!」とお伝えすると、T様は笑いながら答えてくださいました。


T様:いやぁもう、わたしも自分が子育てするようになってからはひとつも買いませんもん、ふふ。わたしはね、買うてもらったけどね、長女じゃったけ。兄弟が数うなってきたら、それどころじゃないですわ。
長女(T様)、長男、次男、次女でした。女の子の節句ではひな人形を出して。親が毎年してくれよりました。
男の子の節句、五月の節句では男の子のものを出して、それから、旗を出して。みんな、どこの家もしよったんですよ、昔は。


わたし:旗というと、国旗でしょうか?

T様:いや、国旗というか……どう言うたらええんだね、こう、(マスクのような)長い旗でね。

五月の節句で飾る旗というものを調べてみたところ、子どもの名前入りののぼりなどがいくつか出てきました。しかし、T様の仰った旗はそういったものではなく、高知県の工芸品である「フラフ」というものだそうです。(上記の五月の節句のお話は、T様が高知県に移られ、息子様が生まれた後のお話とのことです)

 

高知市(n.d)「土佐の手づくり工芸品」(https://www.city.kochi.kochi.jp/site/tosa-kogei/tosanotezukuri-furafu.html
また、こちらのサイト、「高知家の○○」様では、フラフの作り方の様子が詳しく掲載されていました。
高知家の○○(n.d)「職人の手によって作られる一級品!極彩色の伝統的工芸品「フラフ」」(https://www.kochike.pref.kochi.lg.jp/column/21569/
色あざやかで素敵な旗の数々にびっくりしました!五月になるとあちこちで、こんなにうつくしい旗が立てられているような光景が見られるんですね。素敵な文化だなあと思いました。

また、ひなまつりのときに食べるものについて、T様は以下のようにお話しくださいました。

わたし:徳島県もやっぱりひなまつりは、ひし形のお餅なんでしょうか?

T様:そうそうそう! 赤白緑とひし形にして、親がみんな、そんなことしてから、作りよりましたもん。わたしは自分が生活するようになってからは難儀したけんね、子どもにはそんなことようしてやらんけど、わたしはしてもらいました。


お餅と関連してお正月のお話を伺ったところ、T様のお家ではお餅などをよくつくったそうです。昔、よく食べたもののお話をしてくださいました。

 

T様:昔のことですけどね。あんまりもののないときですけどね、お煮しめとか、お団子とか。草餅みたいな。それから、ひし形のあれは、赤白緑。昔はどんなうちでもこしらえたんですよ。家でついてね。でもわたしは、自分がやるようになってからひとつもしません。大変で。もち米もよう買わんかったし。けど昔はどこの家にでも、一升、二升のもち米をかまえて、草餅をしたり、赤いのもしたり、菱餅をこしらえておまつりをしてね。

 

わたし:T様はお料理することは好きでしたか?

 

T様:あんまり好きじゃないですけどね、昔からもう、親がちゃんと、よそで作ったりせずに、自分のうちでつくって、家族がみんな食べるようにしてたからね、することは覚えてました。結婚してからもね、買ったりせずに、自分でつくりましたよ、子どもに。それが、近所もどっこもねえ、当たり前だったんですよ。街の人みたいにね、買うたりせずに。自分が、お米は買うてきて、お米買うたらあとはもう、自分の家で蒸して。ようけじゃないですけどね、自分の家で、搗き(つき)ましたよ。昔からね、古い臼もありましたしね、杵もありましたしね。だいたいちゃんと置いてあるんです。それで習うて。若い者がやったんですよ。はじめはね。臼を叩いたり、餅がカビたりして、いろいろしたけどね、だんだん上手になって。男の人が仕事に行っていなくてもね、女の人、おばあさんとか、おかあさんとか、二、三人で搗いてね、こしらえたんですよ。まとめるのも、子どもが、丸めるときには、あんこを入れて丸めて、手伝ってね。みんなで。あんこを炊いといてね、前の日に。そいで、丸めるは子どもも、みんなで丸めて。家族がするんですよ。そいで、楽しいけんね。しんどいということはないですよ。

 

わたし:楽しくやれるっていいですね。あんこっていうのはお砂糖を入れるんですか、お塩ですか?

 

T様:もうお砂糖、お砂糖。昔はお砂糖どっさり入れて、甘いのをこしらえたんですよ。(あんこの入ったお餅は)好きですよ、ふふ。それがまた、やわらかいうちだとおいしいけど、今度、もろぶたいうのに入れて、長いこと入れとくでしょ。もろぶたという、こんな、木でこしらえたのがあるんですよね。それにずーっと並べてね、外が乾くように。長く入っとっても、あの、腐らんようにして。ちゃんと並べて、上に積んで、置いとくんですよ。それが乾いたら、ぼちぼちぼちぼち食べてね、みんなが楽しんだんですよ。いまはぜったいないですね。
昔は、お正月がくるいうたら、子どももお餅を楽しみにするけ、みんな、お米を買うてきて、みんなでこしらえたんですよ。ほかにはね、楽しみいうたら、お正月か、お盆かなんですよ。

 

もろぶたというものを聞いたことがなかったため調べたところ、餅を入れたり、味噌麹を発酵させる時に使う長方形の木箱とのことでした。
また、T様がいちばん好きな食べものについて伺うと、このお正月やひなまつりのようなお祝いごとのときに食べたものについて、うれしそうに教えてくださいました。

 

T様:子どものころからね、あんまりええもんは食べてないけど、なんでも、なんかお祝いごとがあるときには、混ぜたおすしを、親が作ってくれて食べたんですよ。それがいちばん好きでしたね。なんでも入れるんですよ。にんじんでもごぼうでも、たけのこでもなんでも、そこらにあるものを小そうに切って煮て。それからご飯はお酢で混ぜたら、それを入れて。とにかくぜんぶ混ぜて、こんな大きなあれで。それで、みんなが食べるからね、ようけなきゃいかんから。

 

わたし:大きな桶みたいなのでやるんですか?

 

T様:そうそう、平たいようなのでね。あんなんがみんなどこの家にもあってね、こしらえてたんですよ。きれいに、上品に、巻きずしをしたり、握りずしをしたり、できんですからね。ぜんぶ混ぜこぜにしてね。それがおいしゅうてね、ほんと。どこの家でも、みんながそうしよったんですよ。

 

お母様特製の混ぜずしの話をしてくださるT様の笑顔はとても素敵で、わたしもあたたかい気持ちになりました。日本には一年を通して様々な行事がありますが、地域によってお祝いの仕方などもまた多様であり、自分が知らない文化も多く、毎回新鮮なお話が聴けて本当にうれしいなと思います。

T様、素敵なお話を聴かせていただき、本当にありがとうございました!

 
 
 
 
 
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