デイサービス長老大学

高齢者の皆様と共に未来をつくる。デイサービス 長老大学 のブログです。


昔の豆腐づくり~臼で大豆を挽いて~


 こんにちは、長老大学オンライン支店スタッフのあいかわです!

 

 5月も下旬が過ぎ、もうすぐに入梅の時期になりますね。まだまだ肌寒い日もありますので、利用者様方とともに、寒暖差に気をつけて過ごしていきたいなと思います。

 

 今回は、H様の聞き書きをさせていただきました。H様は、お父様が戦争に徴兵されて亡くなったため、子どものころから、お母様と豆腐づくりや炭焼きをして生計を立てていたそうです。そのなかでも、ここでは昔の手作りのお豆腐の製法について、とても貴重なお話を紹介したいと思います。

大豆を臼で挽く

 お母さんが近所の人から大豆を買うてきて、前の晩から、一升くらいの大豆をね、お水に漬けておくと、そうするとあくる日の朝、大豆が膨れて大きゅうなるんです。

その膨れた大豆を、昔は機械がなかったから、石の臼で挽きました。板の台の上に臼をふたつ、上下に重ねて置いて、臼のふちに大豆を入れる穴があってね。大豆を挽いたら、お豆腐になるものが、下の板へ流れていきますから、桶を据えておいてね、それを桶のなかに受けるんです。木でつくった桶にね。

 臼を挽くのはね、上になっちょる臼のふちに穴を開けてね、そこに木を通してますがね。それで臼を回すんです。重いからね、ひとりで回せないから、母とふたりで回して、大豆を挽きました。

 

 最初、臼とお聞きしたとき、お餅をつくときにつかうものが頭に浮かびました。しかし、H様の教えてくださった臼は、それとはまたちがう形のものだったそうです。

 下記、どんなものかわかりやすく説明されている動画様がありました。


船橋市広報課(2021/02/24)『使ってみよう昔の道具「石臼」【生涯学習チャンネル】』(https://youtu.be/UcvB6g_OaSI


www.youtube.com


挽いた大豆を釜で炊き、袋に入れて絞る

 それで、挽いたものはまだ生ですから、大きいお釜でね、炊いて、沸かすんです。その沸騰した、炊いた豆を、次の袋、木綿の布でつくった大きゅう袋へ入れるんです。

 それから、桶の上へ棚というものを置いて。棚というのは、竹を割ったのを、縄で組み合わせたもの。幅も50センチばあのものです。それを、炊いたものが入った木綿の袋を絞るためにつかうんです。桶の上に棚を入れて(置いて)、その棚の上に袋を上げてね。(袋を絞るのは)手でするのは痛いからね、大きい白いしゃもじをつこうて、それで袋を押し付けて、絞ったお汁(豆乳)を、お釜でまた炊いてね。

 

豆乳を固めて成型する

 それから、炊いたお汁に、固めるために、にがりというお水を入れます。それで、10丁くらいお豆腐ができるような箱へ、白い木綿の布を敷いて、柄杓(ひしゃく)でお汁をその布の中へ入れて、その布から水が出たぶんをのけて。木の板をその箱のなかへ置いて重しにして、それからまたその上へ石を置いて、重しをしまして。(余分な)お汁を流しました。1時間ばあ、重しをしたと思います。

 それで、きれいな型のついたお豆腐が10丁分できました。それを包丁で2丁ずつ切って、5列に並んで、10丁できるようにしました。

 

 上記の工程を、毎朝すべて機械なしの人力で行なっていたということに、ただただ驚きました。

 また、できたお豆腐は、毎朝通学時に、H様が売って歩いていたそうです。

 

 中学校までは一里ありました。学校に通うとき、道々で、一軒一軒お豆腐を売りもっていきました。豆腐はちゃんと(水気を)絞ったものを、取っ手のついた竹のカゴに入れて、布をかぶせて10丁運びました。もうずいぶん前のことで、あんまり覚えてないですけんど、当時、豆腐は1丁が15円くらいだったように思います。竹のカゴは重たいので、脇に抱えて持って行きよりました。

 

 買ってくださる方々は、いつも「おいしい」と言ってくれたそうです。H様は、毎朝そうやって学校に行きながら、おうちのお手伝いも一生懸命しているということで、学校の先生から推薦されて表彰状をもらったそうです。お母様もとても喜んでくれたそうで、額縁に入れて、表彰状をおうちで飾っていたとのことでした。

 なお、豆腐作りについては、農林水産省のホームページにこのような記事があります。

http://農林水産省(n.d)『特集2 新・日本の郷土食(1) 日本が誇る健康食 豆腐と豆腐料理』(https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1301/spe2_01.html

www.maff.go.jp

 

 また、動画サイトにはいくつか、昔ながらの製法を映像で紹介しているものがありました。イメージがとてもしやすいと思います。

KSB瀬戸内海放送(2017/07/21)『昔ながらの製法守る…釜で炊く豆腐屋さん』(https://youtu.be/Km-cU7UhZmc


www.youtube.com

 

 これらを拝見したうえで改めてH様のお話を考えますと、例えば機械で大豆を挽くところを、H様のおうちは臼で挽いていらっしゃった点など、「昔ながらの」と紹介されているこれらの製法よりもさらに手間がかかっており、ものすごく手間暇をかけてつくられていたことがわかります。ミキサーなどの機械が普及したいま、このような製法でつくられているところは、もうほぼないのでないでしょうか。

 豆腐は日本の伝統的な食べものですが、その歴史を知るうえで、H様のお話は、大変貴重なものだと感じました。

 H様、とても貴重なお話を聴かせていただき、本当にありがとうございました!