こんにちは、長老大学オンライン支店スタッフのあいかわです!
最近は春の陽気がようやくすこしずつ感じられるようになってきましたね。とはいえ、まだ寒暖差の激しい時期ですので、体調に気をつけて皆様と過ごしていけたらいいなと思います。
今回は、T様とK様のおふたりそれぞれに、シイタケの栽培についての聞き書きをさせていただきました。(お話は別々にお伺いしています)
T様とK様はずっと山ぐらしをされてきた方々です。T様は様々な農業をやってこられ、以前は焼畑農業のことをお伺いしました。K様はシイタケの専業農家さんでいらっしゃいます。
今回は、T様とK様が長年やってこられたという、シイタケ栽培についてのお話を紹介したいと思います。
まず、シイタケはどうやって生えるのかというわたしの質問に、T様とK様は、駒というものや、その駒を植える原木についての話もしてくださいました。
T様:木を切って、干して、木がだいぶ乾いたころ、玉切って、駒(コマ)を植えてつくるんです。駒は、小指ばあくらいのを、木のなかに打ち込むんです。木は、ドングリいう木があるんです。それを使うんです。それ(ドングリの木)も植えとくんです。昔は、ナラの木じゃ、シデの木じゃいう木でつくりよりました。自然に生えた木で。いまはドングリいうて、木を育ててつくりよります。(そういう)生えやすい木があるんです。なんでもの木は生えません。
K様:クヌギの木(ドングリの木)っていう木があるのよ。それを植えておいてね、だいぶ大きゅうなったころにね、まあ、ぜんぶで直径がこれくらい(30cm~25cm)できたらね、駒を植えるんです。ぜんぶ、木(の長さ)を1mに切ってね。1本ずつ、長うに切っていくんです。それで、駒、種駒いうたらね、大事な菌の種類が(そのなかに)入ってるんです。種駒を打ちましたらね、それの菌が(木に)回ってほら、そうしてね、シイタケになるんですよ、ふふ。すごいですろ?
※玉切り:立木を伐倒して枝を払い,用途にあわせて一定の材長に鋸断(きよだん)(玉切り)して丸太にすること。
わたし:木に駒を仕込むときは、どうやってやられるんですか?
T様:駒を植えて、槌で打ち込みます。その駒を、槌で叩いて打ち込むんです。力はあんまりいらんけんど。最近はやらんけんど、(T様自身も)長いことやってきました。(駒を打ち込む間隔の)隙間は、約5寸くらい(=約15.2センチ)です。季節的には、まだ寒いうちに。3月ごろじゃったろか。2月にやる人もおります。はよう植える人もおります、木を切った時期の都合によっては。
K様:電動のね、駒打ち機(電動ドリル)がありますがね、それを使って、駒を植えるんです。木に穴を開けて。それで、駒の先をほら、細いところを、つっと、この穴に入れてね。とんとんと金づちで叩くんです。(穴を開けるのは)電動ドリル使ったほうがね、楽にいきます。電気でほら、がーっと穴を開けてくださるろ? ちゃんと(こちらが)言うようにね、穴が開くんですよ。面白いですがね、ふふ。ドリルを使っても、ケガしたことはないです。わたしがね、いちばん上手いうて、言ってくれました。駒を植えるのがね。
ひとつひとつ木に駒を植えていくのは大変な作業だと思いますが、おふたりともとんとんという掛け声とともに打ち込む仕草を見せて下さり、長年やってこられたんだなというのがよく伝わってきました。また、電動ドリルを使うというのは、加減が難しいのではないかと思い、それを使いこなすのは本当にすごいなと感じました。
わたし自身は、駒というものについてはもちろんのこと、シイタケを栽培するには、木の種類を選ばなければいけないというのもまったく知らなかったので、とても勉強になりました。
こちらのサイト様では、駒打ちなどの様子が掲載されています。
「JA長野」様(2023/03/02)『シイタケの「駒打ち」を教わってきましたよ』
(https://oishii.iijan.or.jp/products/post-1569)
また、シイタケの生え方というのは、気候や環境が密に関係しているとのことで、今回はそのお話もおふたりから教えて頂きました。
T様:シイタケの生え方は、形は、最初は小さくて、雨が降ったりしよるうちにだんだんと収穫どきにとれるようになります。いっぺんにずうっと採れるんじゃない、自然に、何回もで採るようになります。(大きくなったやつを)順に採ります。シイタケは何ヶ月くらいかで生えます。一年はかからんです。いまはぼつぼつ生えて、ちょっとぬくうなったらだいぶ採れるいうて。いま(2月末)は小さいのがぼつぼつ生えてます。雨が降ったら急に大きくなったりします。もうちょっと温度があがってきてから。
K様:太陽はいかんけんど、ほらある程度ね、湿りも、乾燥も与えてね、そうやって上等にせんとね、上等のシイタケはできません。(原木は)木陰へ持っていって、いれるのよ。そうせんとねと、やっぱりね、日光が過ぎたらね、弱ります。ほいでね、黄色いね、ネットを張ったりしてね。ええ、色は黄色でも黒でも構いませんけんどね、ネットを張るんです。ネット張りは(旦那様と一緒に緒にK様も)します、します。孫もね、お手伝いしてくれてね。それでね、「わたしら(K様たち)がしたシイタケ木が、こんなに大きくなったの!?」言うてくれてね。ほんとにね、かわいいですよ。
それで、駒を植えた木のもとに、こんなになって、シイタケはいっぱい生えていくのよ。20でも30でもできます。1本の木にね。だいたい、そうですねえ。ひと夏しましたら、たくさんすればするほどできるんです、個数も。年によったら、たくさん植えたら、その数量ばあ採れますけんど、ほら、なかなかぜんぶ自分のところで木をね、処分するいうたらね、大変ですきね。でも、おいしいのはおいしいですよ。
わたし:20や30ってすごいですね! でもシイタケって、お水をあげたりするわけではないんですね?
K様:そうです、そうです。もう生えた分にね、お水をやったらほら、ちょっとね。お水がかかりすぎたところはね、ちょっとね、水分が過ぎるんです。
この後、シイタケの収穫には鎌を使うのかと伺うと、T様もK様も、「やっぱりね、手で採ります。手で採らんとほら、ぐじゃぐじゃになるきね」と仰っていました。おふたりとも、本当にシイタケ栽培についての経験と知恵が豊富で、わたしは尊敬の念しかありません。
また、T様にはしいたけの品種についても伺いました。
T様:しいたけは品種によって小さいのもありますがね、「にくまる」いう菌を植えたら、厚い大きいのができます。他にもちょっと薄い小さい品種もあります。(菌は)森林組合から買ってきます。それから、森林組合は農家から採れたシイタケを買い取って、小売りに出しております。農家さんが森林組合に(シイタケを)買うてもろて。(うちも)買ってもらったこともあります。
にくまるという名前を聞いただけでも肉厚でおいしいシイタケが目に浮かびます。そうやってお伝えすると、T様は笑ってくださり、シイタケがお好きだということも教えてくださいました。
T様:シイタケは好きです。食べております、いまも。ぼつぼつ生えてるので。お汁にも入れたり、煮物にもしたり、おでんにも入れたり、いろいろにして使っております。しいたけは身体に良い言うてね、おばあさん(お姑さん)が北海道に旅行に行ったときに、「シイタケの汁を買うていかんかね」って(北海道の人が)勧めてくれた言うて。北海道の人が、あはは。「うちでつくって食べよります」言うて話したって、帰ってきてから言いました、ははは。
T様は、現在はおうちでは少しだけ栽培しているとのことでしたが、原木について 「何十本もあったんですか?」と伺うと、「何十本もあります」と笑顔で教えてくださいました。実は、わたしはシイタケが大好きなので、それだけたくさんのシイタケが栽培されているというのは想像するだけで最高の環境だなと思います。「天国みたいな場所ですね!」というわたしに、T様はまた笑いながら、「田舎です」と応えてくださいました。自分の家で育てたシイタケなら、何十倍もおいしく感じられそうですよね。
また、K様も、ご近所の方に栽培したシイタケを差し上げているそうで、とてもうれしそうにそのお話をして下さいました。
K様:近所の人もね、「Kさんちのシイタケは妙においしい」いうて言うてくれるろ? それで、近所の方にもあげたり、主人の友達から、わたしの友達なんかにもね、あげたりね。主人がね、近所の人に、「これを植えたけんど、植えてみるかね?」言うたらね、「植える植える!」言うてくれました。ほんとね、近所でもね、シイタケをあげたらみんな大喜びしてくれます。うれしいです。
シイタケの栽培はとても難しいのではないかと思いますが、T様やK様のように長年の経験と知恵がある方に教えて頂けたら、上手に栽培できるのではないかと感じました。
なにより、わたしがシイタケ好きということで、「今度シイタケができましたらね、よかったら差し上げますからね」と何度も言ってくださるK様のやさしさや、シイタケにまつわる思い出のエピソードを笑いながらしてくださるT様のほがらかな表情によって、わたしはとても幸せな気持ちにならせて頂けました。
T様、K様、貴重なお話を聴かせていただきまして、本当にありがとうございました!